【感想】機動戦士ガンダムSEED and DESTINY【ネタバレ有】

ちょっとした作業中の暇潰しに、機動戦士ガンダムSEEDと、その続編の機動戦士ガンダムSEED DESTINYを観ることにした。テーマは人種・民族差別・非戦かな。明確な答えは出ないから、そういう気持ちのいい終わりを期待する人との相性は悪い。なんとな~く面白い作品を見たい人に良いかも。使い回しが目立つ点と深く考えたら面白くない点はマイナス。

 

ガンダムSEED

正直に告白すると、私は昼ドラに出てきそうなフレイ・アルスターに振り回されっぱなしで、笑いながら「なんだこいつ」を連発していたので、途中から変な視点から見ていたと思う。イイハナシダナーって思ってると彼女が出てきて踏み潰していくんだ。格好いいモビルスーツだなー、熱い戦闘だなーって思ってると彼女が踏み潰して台無しにしていくんだよ。思わず「ふふ♪」ってなる。

 

彼女は凄いぞ。

 

1話から頭の悪そうな3人組の中心人物的な位置にいて性根の悪さを臭わし、脱出ポットから救出された後は1話から疑われる性根の悪さを存分に発揮し、ザフト軍に父親を殺された後は精神的に弱っていた主人公を復讐に利用すべく身体まで使って取り入り、あらゆる場面で喚き散らながら物語を引っかき回し、最後は善良なメインヒロイン的な扱いの中で輝きながら死んでいくんだ。

 

その存在の必要性を微塵も感じない事も含めて作中で最も輝いたキャラクターだった。お前がいるべきは昼ドラだよ。ここではないと思う。ガンダム悪女ランキングで上位に輝いた実力は伊達じゃない。ガンダムSEEDを見る時は、彼女の堂に入ったピエロも楽しんでくれよな。作中で最も人間味のある貴重なキャラクターだ。私はこの物語なら足を引っ張るから不要だと感じたけど、キャラクターとしての完成度は保証する。

 

何で人間味について言及するかって?他の主役達は途中から物語の大筋に引っ張られて人間味が消えたりするからだよ。特にキラについては脚本の能力を疑う領域。本気の殺し合いをしたと思ったら人間味のない賢者になっちまうのさ・・・。

 

ガンダムSEED DESTINY

DESTINYからの主人公、シン・アスカの扱いは凄かった。彼は、一言で表すなら幼稚な性格を助長され、そのまま性格の隙をつかれて利用され、前作主人公のキラが表に出てきた辺りで敵陣営に入り、最終的に作中最強のキラに落とされることすらなく、錯乱したと思ったらアスランに雑魚敵よろしくMSを破壊された。驚きの扱いである。唖然としちゃうね。

 

彼については終始『MS搭乗時の暴力』と『気に入った人間に向けられる限定的な優しさ』と『戦争と家族の死で生まれた悲劇的な要素』を強調するんだけど、何もかも過程をろくに描写しない、内面をろくに描写しないから、悪い意味で歪な存在にしか見えなかった。人によったら全てに(笑)をつけても不思議じゃない領域にいたと思う。お世辞でも私の価値観じゃ良いと言える脚本ではなかったな・・・。人間味のある貴重なキャラクターだったから、うまく料理したら良質で魅力的な主人公になったろうに。

 

彼に限ったことではないのだけれども、この作品は内面の描写が無いと言っても過言ではない程度に不足していたと思う。全体的に行動が唐突で違和感が凄かった。1人1人の内面、考え、その行動に到る理由、そのへんのことが大切な物語だろうに、そのへんの描写が・・・ない・・・。

 

他に気になった事は、作品全体から匂う明確なゴールはないけど何となくこういう話にしたい感、実力不足からくる話とキャラクター達の折り合いをつけられないから話に必要なそれっぽい動きをさせてしまった感、戸惑いや葛藤の表現であろう"でもでもだって"の下手な使い方と多用、このへんは本当に気になった。鼻につくと表現したい程度には。

 

ともかく、DESTINYは脚本でキャラクター達が色々と残念なことになっていた印象が強い。特に前作からの主要人物達は見るに堪えない領域にいた。 

 

まとめ

SEEDは普通に面白かった。特別に面白いと言える完成度はなかったけど、普通に楽しめる範囲の作品だった。そして、悪女フレイ・アルスターでもう一杯イケる。彼女の道化は堂に入っている。そんな彼女を中心に破滅を楽しむ視聴も含めるなら、一粒で二度美味しい両作の類だと言える。

 

DESTINYは残念だった。色々と酷すぎるの一言。特にシン・アスランカガリポンコツ具合は抜群の威力だった。序盤から私の精神にヒビを入れ、中盤に入る前にへし折ってくれた。まるで惹かれねえ・・・。前作から続いていることを考えれば物語の良さも欲しかったんだけど、残念なことに"雰囲気重視でそれっぽく"終わってしまい、静かに仰け反るしかなかった。キャラ崩壊とストーリー崩壊を同時にやるのはヤメテ!

 

両作共、気に入った作品が終わってしまった時の気持ちのいい余韻はなかったな~。モビルスーツは格好よかったし、設定は面白かったと思うから、もっと良い脚本で見たかったな。

 

で、気になったから脚本家の人について軽く調べた。

 

不出来な脚本を書いてしまった理由を十二分に持つ人だった。そもそも脚本家になるための勉強すらしていない。夫の手伝いをしていた程度。その後、パートでも始めようかと考えていた頃に夫に誘われて夫お抱えの脚本家に。まるで理解できない。脚本に対する姿勢もインタビューを見る限りは曖昧。そもそもTV作品の脚本は忙しい事をSEEDの前に経験していて、SEEDの脚本をやる気はなかったらしい。でも「私でも好き勝手にやっていいならやれる」みたいな雑な根拠で引き受けてる。慣れない作業に四苦八苦なんて一文まである。実力に見合わないであろう信念まで持っている。

 

脚本については壊滅的で当然だったらしい・・・。

 

違和感の理由はネットにあったのだ・・・。特に気に入らなかった"でもでもだって"に到る理由も理解できた。そりゃ実力不足だろうよ。映像作品ぜんぜんやってないじゃん。しかも言葉にしない世界が好きで、絵本のような世界を好んでる。そんな人が担当したらDESTINYになるよな・・・。

 

映像面の問題についても脚本の遅れで色々あったらしいし、監督と脚本の失敗から全て崩れていった作品なんだろう。答えがそこにあった以上、もはや考える必要もなし。う~ん残念!の一言で終わるとしよう。う~ん残念!